歪み真珠

美的感覚とは嫌悪の集積である。

冬の装い

 

今年は新しいウールのコートを買った。私にしては珍しく淡い色のものだ。自分のお金で、きちっとしたコートを買えたことが嬉しかった。はりきってお手入れ用のブラシまで買ったというのになかなか寒くならない。おや、この冬は寒くなるんじゃなかったのかしら。彼に早く実物を見せたくて、次のデートで着れるかなぁと毎回言っている。はてさて、次のデートは焼き肉だ。高級店ではないから、コートを預かってはくれないだろう。臭いがつくので着られない。うーん、いつになることやら。

 

現在、彼におねだりしている革の手袋。クリスマスまでおあずけなので、もう少し先になる。好きな人からもらう革の手袋、楽しみで仕方がない。その手袋をはめてオーストリッチのハンドバッグを持ちたい。ふとした仕草、たとえば彼に腕を絡ませたとき、風が吹き髪を整えるとき、コートの袖からグローブのファーが見えるだろう。可愛いんでしょうねぇ。Pinterestでグローブをつけた女性を眺めたりしながら、プレゼントしてもらう時を心待ちにしている。それもまた楽しい時間だ。

 

寒い日にカシミヤのマフラーとグローブを取り、ウールのコートを脱いだらシルクブラウス1枚というのは豪華で、気分がいい。貴族の娘になった気分だ。透け感のあるシルクに合わせるのは、Trefleのキャミソール一択である。1万円以上するそのキャミソール。下手をすれば、普段着ている服より高い。母は黒と白、色違いで持っていて、それをよく拝借している。そろそろ自分で買うのがよかろう。そう、わたしは下着にお金をかける女よ、ビビっちゃいかん。だってシルクから透けるキャミソールがダサいなんてあまりに悲しい。

 

HERMESのスカーフを一昨年に祖母からもらった。が、我が貫禄のなさゆえに全く似合わず、ちんちくりんになってしまう。かわいそうに、箪笥の中で眠り続けている。今年の冬こそリベンジしたい。Deuxiemeのカシミヤタートルにつけるのがやりやすいかしら…と思いを巡らせている。妄想の中の私は完璧であるが、現実はどうかしら。

HERMESのネクタイは一日たっても全く皺がよらない、と亡き祖父はかのブランドのネクタイしかつけなかったらしい。HERMESのシルクに目がないのか、ヨーロッパに出張したときは必ず祖母にスカーフをプレゼントしていた。せっかくなら、日本が豊かだったその時代にケリーバッグ(バーキンよりケリー派です。ワンハンドルかわいい)などを買っておいてくれたらよかったのに…と祖父の虎の衣を借りようと、あさましい考えをしてしまう。ごめんね、おじいちゃん。

 

書いているとますます寒い冬が楽しみになってきた。体をアクティブに動かす気は毛頭もないが、気分と装いはアクティブにいきたい。