歪み真珠

美的感覚とは嫌悪の集積である。

5月の大島渚

香を焚く、珈琲を淹れる、ダイヤを眺める、本を読む。それが雨の日の休日。

今週のお題、雨の日の過ごし方。

晴れの日も似たようなものだ。何分友人が少ないので、晴れであろうと雨であろうとやることは大きく変わらない。雨だと自転車に乗れないので、少し遠い喫茶店に行けない、タクシーに乗る回数が増える。これぐらいの違い。

やることは変わらなくとも、空が青いのは良いものです。お洗濯物もよく乾くし、底が革張りの靴も履ける。早くも梅雨入りしたこの頃、晴れた休日は気分がよかった。

図書館が再開されたので、1Q84の最終巻を借りに行った。恥を忍んで言いますが、実は1Q84は第2巻でおしまいだと思っていたんです……あぁ!言ってしまった、なんと恥ずかしい!!村上春樹が好きだなんてよく言えたな、何巻で終わりかも知らなかったのかよともうひとりの自分から罵声が聞こえる。はい、ごめんなさい。なんかおかしいなとは思ったのよ。BOOK1が4月ー6月、BOOK2が7月ー9月。残りの10月以降は……?と思っていはいたんですよ。でもさぁ、ああいう終わり方するじゃない…村上春樹さんって。兎にも角にも、青豆さんと天吾の物語はもう少し続くようです。読み始める止まらなくなるので、ちょっとだけ、ちょっとだけねと、目次だけ眺める。二人が重なり合うところがあって、とても嬉しくなる。しばらく寝不足が続くだろう。職場の人にしんどそうだけど大丈夫?と聞かれたら、梅雨のせいにすればいい。私の職場は優しい。

 

美容院で久しぶりに縮毛矯正をあてた。恋人が縮毛をあてて、前髪をかきあげていた時代の懐かしい写真を引っ張り出してきた。そして久しぶりにこの髪型やってとねだられたから。以前、伸ばしていた髪をばっさり切ったのも恋人がショートがいいと言ったからだし、なんだか彼の言いなりになっている。こんなはずじゃなかったんだけど…と思いながらもお願い事を聞いてしまう。

 

この休日はずっと前から楽しみにしていた映画を観に行く。ナギサオーシマの「愛のコリーダ」特定の男への情欲の果に““チョッキン””する物語としかあらすじを知らない。

一刻も早く1Q84を読みたいので、1Q84を携え、映画館へ向かい、愛のコリーダを観て、また1Q84を読みながら帰宅……をやりたい。しかしだ、想像しただけで情緒が破綻しそうだ。愛のコリーダ1Q84。そんなわかりきった混ぜるな危険をやるほどマヌケじゃない。代わりに同じく図書館で借りてきたモームの短編集「ジゴロとジゴレット」を持っていくことにする。1Q84はおあずけ。

モームの短編は軽妙ながら、独特の味わいがある。短編の中に『頬紅の下がすっと青ざめた』という描写があった。思わず唸る、うまい。「すっと青ざめる」じゃなくて、「頬紅の下」で青ざめるのだ。この世界の解像度の高さよ。化粧を落としていなければ、女の頬は余程のことがない限り青ざめない。取り繕わなければいけない場面(社交の場ではほとんどの場合、取り繕う必要がある)で簡単に青ざめたりしない。頬紅の下で表情をなくすのだ。それと、この人は女性特有のふてぶてしさを描写するのが抜群にうまい。ここまで書けるなんて、モームは女嫌いなんだろうかと思ったが、同性愛者と知り、腑に落ちる。なるほど。

 

 

帰宅。愛のコリーダは想像と違って、さっぱりとした映画だった。情緒はめちゃくちゃにならなかった。おそらく1Q84と混ぜても大変なことにならなかっただろう。次は6/4から公開される戦場のメリークリスマスを観に行きたい。こちらはDVDで一度見たけれど、それこそ情緒がめちゃくちゃになってしまったので、映画館に行くときは細心の注意を払って行く。デヴィッド・ボウイのオムファタールっぷりといったら…

久しぶりに映画館で作品を見たせいかとても眠たい。よく眠れそうだ。