歪み真珠

美的感覚とは嫌悪の集積である。

歪み真珠日記

 

選択肢が多いことは幸せなことだ、そう思って生きてきた。マクド「しか」選べない人と、三ツ星フレンチシェフのレストラン「も」選べる人どちらが幸せか。簡単なことだ、誰しも同じことを答えるだろう。でも、人の人生はそうはいかない。マクドと三ツ星フレンチシェフのレストランの二項対立では成り立たない。そこに見栄やら、お金やら、羨望やら、親の財力やら、政治まで関わってくる。困ったものだ。結局行き着く先は私の弱さなのだと思う。彼に判断を任せて、何かあったら彼に私の悲しみを投げつけるのだろう。こわいな。ちゃんと聞いておかなきゃいけないなことがあるのだ。あぁ選択肢があることの煩わしいことよ!それが当たり前の社会であれば私は悩むことなどなかったのに。そんな答えのないうじうじした悩みを友人に聞いてもらえた。学友といつの間にか女性特有の悩みを話すお年頃になっていた。月日は確実に過ぎているらしい。楽しい時間だった。おそらく、年内に友人と呼べる人と会うのは最後だろうなと思いながら帰宅した。
昨日はお昼に彼と赤ワインのボトルを空けて、夜に友人と会い、焼き鳥を食べた。その後バーに行きカクテルを飲んだのがよくなかった。久しぶりにふわふわふわふわ、世界に膜が張ったような酔い方をした。帰宅すると、母にお酒臭い〜と遠巻きにされた。やはり飲み過ぎたのかしらん。明日は久しぶりの二日酔いやも知れぬ…と思いながら就寝。
まだ暖かかったのでシルクのリボンブラウスを着ていた。が、私は壊滅的にリボン結びが下手らしい。家を出る前、母に「かなちゃん!下手すぎるわよ……!」と呼び止められ、んっと顎をあげておリボンを結び直してもらう。そのおかげで家を出る時間が遅れた。帰りはタクシーなのになぁと思いながらも仕方なく自転車で駅まで行く。遅刻しそうになりながら母に結んでもらったリボン…彼に会えばさっさと解かれてしまう。どうやら彼もリボン結びは不慣れらしい。彼に結んでもらった私の胸のおリボンは不格好であった。恋人は手先が器用なので、リボン結びについて今後精進してもらう必要がある。私のおリボンを綺麗に結んでもらわなくちゃならん。

彼は必ず扉を開けてくれる、デートのときは街中のあらゆる扉が全自動になる。車の助手席の扉だって開けてくれる。大変気持ちがよい。ただひとつ不満があった。エスカレーターに乗ったとき、下りのときに私が下になることが多々あるのだ。昨日、それとなくそのことを伝えると、「あなたがさっさと先に行っちゃうのよ」と困った顔をされる。ほぉ……確かにそうかもしれない……彼は続ける「あなたはねぇ僕が考えてる色んなことを結局ぶち壊してしまうんだよなぁ…」と。んん〜〜ぐうの音もでない。告白されたときも彼の告白プランをぶち壊した前科があった。両手を上げて降参だ、ごめんね。彼のあれやこれやのお気遣いをもう少し汲み取って動く必要がありそうだと戒めた。彼は思った以上に色んなことを考えていてくれるらしい。

今週も先週も彼とお昼のデートをした。2週続けてディナーができなかったことにご不満だったようで、お拗ねさんになっていた。そこで、来週は一緒にお夕飯にしましょうね?と提案するも、来週は研究室の追い込みで厳しいのだと断わられてしまった。ぶぅ。今度は私がお拗ねになる。再来週にはたくさん会えるでしょとご機嫌をとられる。そりゃあそうだけどさ…と思いつつもぶぅたれていた。私がしょんぼりした顔をすると彼は「ずるいよ、そんな顔しないで…」と悲しそうな顔をする。あれこそずるいと思う。『あなたの悲しそうな顔を見ると僕がもっと悲しい』ということでしょう。いつまでも拗ねていられなくなってしまう。
来週は今年最後の映画を観に行くとこにした。燃ゆる女の肖像。とても楽しみだ。