歪み真珠

美的感覚とは嫌悪の集積である。

平日にお休みをとり病院へ行った、半年ぶりの採血。「針は見ちゃだめよ」と、かかりつけの小児科の先生から教わって以来、今も律儀に守り続けている。
本来なら、土曜日に診察の予定だったが、母とお出かけの予定を入れたので、ずらしてもらった。結果、仕事を休むことになった。と、言い訳をする。平日のお休みは気分がいいものだ。春っぽくなってきた空気の中で、お買い物をする人を眺める。時がゆったりとすぎる。仕事中ならこの時間は〇〇をしているな…と思いながら街をてくてく歩く。
ずっと後回しにしていたタスク、「役所への申請」を終え、梅田に出た。靴の踵をお直しに出す。梅田近辺の靴のお直しは阪神さんがいい。ピカピカになって帰ってきた。阪急のBOBBYBROWNで下地を買う。あの有名なスポイトで出すファンデを気に入って使っていたが、使い終えたころ、ひどい肌荒れをし、気づけばマスク生活になった。ファンデを必要とする特別な日は、たまっていた試供品を使っていた。今の気分は日焼け止めと下地とお粉で完成させる肌。マスクにファンデがつくのは気分がいいものじゃないし、何よりせっかく改善されたお肌を下手に刺激するのがこわい。もうファンデはいらない気分だ。化粧品への熱が冷めているのを感じる。それでも新しいものを手に入れるのはワクワクする。ガラガラの化粧品フロアとうって変わって、9階のチョコレートの催事は平日にしては混んでいた。ピエール・マルコリーニのものを買う。ピエール・マルコリーニはハートの形が甘くない。スッとした端正なハートで好きだ。「マルコリーニボンボニエール」を買うか迷う。一粒のチョコレートのためのボンボニエール。なんてかわいいのだ。今回は購入を見送ったが、今度立ち寄ったら買ってしまいそうだ。

お昼にとんかつを食べる。ニ年に一度ぐらいでしかとんかつを食べることはないが、私はこの食べ物が結構好きだ。サクサクの衣とジューシーな豚肉。外で食べるとんかつはうまい。診察と採血が控えているのでビールは我慢する。適当に選んだお店のわりに美味しい。当たりだ。外に出ると行列ができていた。自分の嗅覚に満足感を覚えながら、これまた後回しになっていた恋人のクリスマスプレゼントを見に行く。道中、何度も前を通っては、スルーしていた心斎橋パルコに入ってみる。美味しいとんかつを食べたせいか、フットワークが軽い。すぐ目に入ったのは、ドラのGUCCI。お前の四次元ポケットに入っているのは、タケコプターやもしもボックスなんかじゃなく、多額の契約金でしょうねと一人心のなかでつぶやく。デルヴォーやWoolrichが入っている。へぇ面白い。御堂筋側の路面の一等地にはHERMESがドドーンとあった。すごいわねぇ。「分け入っても分け入っても青い山」ならぬ、「歩いても歩いてもHERMES
ISSEY MIYAKE船場店。洒落臭え場所にある、洒落臭えお店に入る。お目当ての色がなかったので取り寄せてもらう。オンラインでしか見たことがなかったが、実物はよりよかった。これまた洒落臭え、文化服装っぽい男性の店員さんに「お相手の方はよくうちのものを着てくださっているのですか?」と聞かれる。見栄を張り、イエスとこたえてしまう。
てくてく歩くと、Drawerの路面店を見つける。グランフロントに比べて入りやすい店構え。ミントグリーンやサンゴピンクなんかの春らしい色の服が並ぶ。MARNIの好みなノースリーブブラウスを見つける。試着はタダなので、着させてもらう。かわいいなぁ。とりあえず値段を聞いてみる。5万なり。コットンのノースリーブブラウスに5万。Drawerなので案の定洗えないとのこと。夏の汗をかく時期に、しかもコットンに5万。かわいい服はそれ相応の価格なんだねえとしみじみお店を出る。

帰宅したら、母が寿司とワインを並べて待っていた。猛スピードでお風呂に入り、乾杯。そう、お昼にビールを我慢できたのはこれのおかげ。恵方巻き、は口実で巻き物をお腹いっぱい食べた。今週末、プレゼントを受け取り、彼とデートする。楽しみだ。