歪み真珠

美的感覚とは嫌悪の集積である。

彼から欲しいもの 「モードの迷宮」を読んで

私は彼から広義の“拘束具”がほしいのだという一つの結論に思い至った。

 

突然ですが、私のお財布遍歴について。無印EVAケース→無印EVAケース→無印EVAケース→百均のメッシュポーチである。ラコステのかわゆいお財布を無くして以来この調子だ。無印EVAケースは三度買い替えた。彼から何度か、お財布買ってあげると提案があった。そのたびに断った。そんな実用的なものを好きな男からもらいたくなかった。ぜったいに。

好きな人にあげるものの提案としてよくあるのが「毎日使うもの」使うたびに思い出してもらえるから、というハッピーな理由。言いたいことはわかるが腑に落ちなかった。なんかいや。その“なんか”の答えがこの本を読んで見つかった。私の身体をなにかしら縛るものを好きな男から貰いたいのだ。例えば指輪、ネックレス、ハイヒール、香水。

 

今年の誕生日にはゲランの香水を選んでもらった。好きな人に『私の香り』を選んでもらうのは極上の甘い行為の一つのように思っていたから。そしてもう一つ魂胆がある。香りはオンラインでは選べない。阪急さんに足を運び、あの女性だらけのきらびやかな2階フロア。MAC、NARS、RMK、BOBBI BROWN、ルブタン、資生堂の前を通り過ぎ、クラランスやラ・メールと共にある奥の一角へ。まだ試練は続く。次は美容部員に声をかけ、ムエットを嗅ぎ分ける。あちらはプロなので男性が来たら離さないはずだ。

プレゼントですか?素敵ですね〜これからの季節はこのラインがおすすめです今年これとこの香りが新しく出ました甘い香りじゃない方がいいのですねであればこちらはいかがですか?ちょっとスパイシーですではこちらでちなみにミニサイズも一つプレゼントしておりますが…お好きなものをお選びくださいお渡し用の紙袋をつけておきますねありがとうございました。

これを彼にやらせたかった。彼がどぎまぎしながらこれをやっているところが見たかった。その妄想も含めて甘いプレゼントだ。

 

もう一歩踏み込んで考えたい。彼からはよく花束を貰う(というかねだる)花屋さんで大きな花束を買うのはハードルが高いことの一つだと思う。彼が花束を繕ってもらい、大きな袋を抱え、気恥しそうに私を迎えに来てくれるところを妄想するのが愉しくって仕方がない。なんていい男なんでしょう!

花束は拘束具に含まれないだろう。けれど拘束具と同じように生活にあってもなくてもいいものだ。「彼から欲しいもの」をもう少し正確に定義するならば、「贅沢品がほしい」今風だと「不要不急のものがほしい」というところだ。

 

今年の冬、羊革で手首のところにうさちゃんの毛をふわふわとつけたグローブをねだっている。これを書きながら、革の手袋なんてわかりやすく拘束具の一つであることに気づく。自分に呆れつつ微苦笑している。仕様がないですねぇ。

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